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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)784号 判決 1960年7月12日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人木本篤の上告理由第一点ないし第四点について。

論旨は要するに、物納土地の払下は行政処分である旨を主張するのであるが、国有普通財産の払下を私法上の売買と解すべきことは原判決の説明するとおりであつて、右払下が売渡申請書の提出、これに対する払下許可の形式をとつているからといつて、右払下行為の法律上の性質に影響を及ぼすものではない。論旨は独自の見解に立つものであつて到底採用できない。論旨は上告人は本件土地について借地権を有するから、本件払下によつて財産権が侵害され、本件払下は憲法二九条に反する旨を主張するのであるが、上告人の借地権が侵されるかどうかは借地権の効力の問題であつて本件払下とは直接に関係がない(若し上告人の賃借権が建物保護ニ関スル法律によつて第三者に対抗できるならば、本件土地の所有権が若狭に帰しても、借地権は影響を受けないはずである)。それゆえ、論旨はすべて理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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